支部誕生秘話

昭和9年 日本野鳥の会設立。昭和13年、東京から名古屋に赴任された太田春雄氏が名古屋の地勢と野鳥について、また自然に理解のある文化人が多いことを本部に報告し、同年11月、中京支部設立に至った。京都支部、阪神支部、農大支部についで4番目の支部となる。現在農大支部はないので現在ある支部では三番目に古いことになる。支部長は名古屋大学で動物学を教えていた椙山正雄氏(後の椙山女学園理事長)が内田清之助博士に推挙されて就任、名古屋の財界や有識者の方々が顧問、幹事を勤めた。
本部設立の理念
「鳥類に関する研究、鳥類愛護の思想普及」に基づき支部は常に本部と連絡を取り、支部自身として野鳥見学旅行、諸種の指導、会合等を行うよう定められた。
設立記念パーティは11月5日中区栄町の千代田ビルで午後5時から行われた。当時珍しい野鳥の映画三本中西悟堂会長の講演があり会場はおおいに盛り上がり、終了時刻は午後10時10分となった。 終了後役員会開催と名古屋市の学事課長と教務課長に児童に対する野鳥愛護思想の普及をお願いする予定であった。しかし、時間の都合でやむなく割愛された。出席者39名(会員17名)。
現在の野鳥の会の理念「野鳥を通じての自然保護」と比べ当初の理念は専門的な鳥類学に重きがおかれた印象を受ける。しかし教育関係者に児童の啓蒙をお願いする逸話などを読むと戦前からきちんと将来の社会のことを考えて活動していた姿勢がうかがえる。
年会費は本部に五円、支部に五十銭であり、この金額は庶民の趣味としては高価なものであった。数少ない支部会員が戦前、戦後を通じて
『野鳥』誌に多くの観察記録を投稿している。現存する当時の『野鳥』誌は希少ではあるが、今読み返しても興味深いものがある。

文責 間渕 陽子

参考資料
『野鳥』昭和13年7月号 昭和13年11月号 昭和14年1月号 (日本野鳥の会 発行)
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